心に厚かったので、そういう人たちの例として、彼らの考えによれば、肉欲の罪は最も恥ずべきものであり最も重大なものであり、また唯一の恐るべきものであるから唯一の罪とも言えるのであった。――(相当の者なら決して窃盗や殺害の心は起こすものでないということは、あまりに明らかなことだった。)――それでクリストフは徹頭徹尾正しからぬ者だと彼らには思われた。彼らは彼にたいする態度を変えた。彼が通りかかると、冷酷な顔つきをして横を向いた。クリストフの方では、彼らと話をしたくも思ってはいなかったので、それらの澄し込んだ様子を見るごとに肩をそびやかした。アマリアは彼を軽蔑して避けるようなふうをしながらも、心にたまってることを言ってやるために、しきりに彼と接する機会を作りたがっていたが、彼はその無礼な仕打ちをも見ないふりをしていた。
 クリストフが心打たれたのは、ただローザの態度だけであった。この少女は家族のだれよりもいっそうきびしく彼を非難した。それは、クリストフの新しい恋が、彼から自分が愛される機会を、まったく破壊してしまうように思われるからではなかった。彼女はそういう機会が一つもないことを知っていた――
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