感じてるがようだった。クリストフの心も大地と同じだった。彼は考えていた。
「俺も眼を覚ますだろう。」
彼の眼にはまだ涙があった。彼は手の甲でそれをぬぐった。そして霧の帷《とばり》の中にはいってゆく太陽を、微笑みながらながめた。雪を含んだ重い雲が、強風に吹きたてられて、町の上を通っていた。彼はその雲に向って軽侮の身振りをした。氷のような風が吹いていた……。
「吹け、吹け!……俺をどうにでもしろ! 俺を吹き送れ!……俺は行先をよく知ってるのだ。」
底本:「ジャン・クリストフ(一)」岩波文庫、岩波書店
1986(昭和61)年6月16日改版第1刷発行
入力:tatsuki
校正:伊藤時也
2008年1月27日作成
2009年8月1日修正
青空文庫作成ファイル:
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