ら二人は追っかけっこをした。オットーは兎になり、クリストフは犬になった。垣根《かきね》をつきぬけたり溝《みぞ》を飛び越したりして、林や牧場を駆け降りた。麦畑の真中に飛び込んで、百姓に怒鳴りつけられた。二人はなおやめなかった。クリストフは実にうまく犬の嗄《しわが》れた吠声を真似たので、オットーはおかしさのあまり涙を出して笑った。ついには、狂人のように叫びながら斜面を転げ降りた。もはや声も出なくなると、そこにすわって、笑ってる眼で顔を見合った。今はもうまったく幸福で、みずから満足しきっていた。もはやえらい友人のようなふうをしようとしなかったからである。あるがままの心を率直にさらけ出していた。二人の子供になりきっていた。
彼らは別に意味もない唄《うた》を歌いながら、腕を組み合わして帰って行った。けれども、町にもどりかけると、またそれぞれ様子ぶる方がいいように考えた。そして林の出はずれの木に、二人の頭字を組み合わして彫りつけた。しかしその感傷的な気分は、上|機嫌《きげん》な心にうち負けた。帰りの汽車の中では、顔を見合わすたびに大笑いをした。たがいに別れる時には、すばらしく愉快な一日を過ごした
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