て、自分の方がすぐれてると信じていた。クリストフの方では、オットーが少しの反抗もしないで自分の酷遇を受けるのに、不満を覚えていた。
 彼らはもはや初めのころのような眼ではたがいに眺めなかった。二人のたがいの欠点が明るみにもち出されていた。オットーはクリストフの独立|不覊《ふき》を以前ほど面白く思わなかった。クリストフは散歩中厄介な道連れだった。彼は少しも世間体《せけんてい》をはばからなかった。勝手な真似《まね》をして、上着をぬぎ、胴衣の胸をはだけ、襟《えり》を半ば開き、シャツの袖をまくり、杖の先に帽子をつっかけ、身体を風にさらした。歩きながら腕を打ち振り、口笛を吹き、大声に歌った。真赤な顔をし、汗を流し、埃《ほこり》にまみれていた。市場もどりの百姓のような様子だった。貴族的なオットーは、彼と連立ってるところを人に見られるのが、たまらなく恥ずかしかった。街道をやってくる馬車を見かけると、十歩ばかり彼の後におくれるようにして、一人で散歩してるふうを装った。
 帰りに、料理屋か汽車の中などで、クリストフが話を始める時にも、オットーはやはり当惑するのだった。クリストフは騒々《そうぞう》しく話し
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