ような一徹な性質をもととして建てられてるものでないと感じ始め、事物にその与ええないものを要求してるのだと感じ始めた。そこで、彼はみずからに打ち勝とうとつとめた。彼はきびしくおのれをとがめ、みずから利己主義者であるとし、友の愛情を独占するの権利はない者であるとした。彼は真剣な努力をして、たとい自分はいかにつらかろうとも、友をまったく自由にさせようとした。謙譲な精神からわざとつとめて、フランツを疎《うと》んじないようにオットーに勧めた。オットーが自分より他の者と交わって喜んでるのを見るのが嬉《うれ》しいと、思ってるらしい様子を装った。しかしオットーはそんなことに騙《だま》されはしなかったが、意地悪な心から彼の言葉どおりを行なった。すると彼は顔を曇らせないではおれなかった。そしてにわかにまた怒りたった。
厳密にいえば、もしオットーが彼より他の友だちの方を好むとしても、それを彼は許しえたであろう。しかし彼がオットーに見逃してやることのできなかったことは、その不真実であった。オットーは偽瞞《ぎまん》家でも虚構家でもなかったが、あたかも吃者《どもり》が言葉を発するのに困難を感ずるように、真実を言
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