。無器用な片手でそのハンドルにすがりついた。しかし狼狽《ろうばい》のあまりまたそれを放した。ハンドルはがたりと締まった。メルキオルは見ようとしてふり向いた。すると彼がのっかって身を揺っていた椅子《いす》は平均を失った。彼は大きな音をたてて下に転がった。クリストフはおびえてしまって、逃げ出す力もなかった。彼は壁にしがみついて、足下に長々と横たわってる父を眺めた。そして助けを呼んだ。
メルキオルは転げ落ちたので少し酔がさめた。そしてその悪戯《いたずら》を働いた椅子を、ののしったり、侮辱したり、拳固《げんこ》で殴りつけたりした後、いたずらに起き上がろうとつとめた後、ついにテーブルに背中でよりかかって上半身をすえた。そしてあたりの様子が眼にはいった。彼は泣いてるクリストフを見た。そして彼を呼んだ。クリストフは逃げたかったが、身動きもできなかった。メルキオルはまた呼んだ。それでも子供がやって来ないので、怒ってののしった。クリストフは手足を震わせながら近づいてきた。メルキオルはそれを自分の方へ引寄せて、膝《ひざ》の上にすわらせた。そしてまず子供の耳を引張りながら、呂律《ろれつ》の回らぬ早口で、子
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