出会うことがあった。向うは祖父をよく知っていた。二人は彼の横に乗った。それはこの世の楽園だった。馬は早く駆けた。クリストフはにこにこして喜んでいた。ただ、散歩してる他の人たちとすれちがう時だけは、真面目《まじめ》なゆったりした様子をして、いつも馬車に乗りつけてる人のようなふりをした。しかし心は自慢の念でいっぱいになっていた。祖父と百姓とは、彼をよそにして話をし合った。彼は二人の膝《ひざ》の間にかがまり、二人の腿《もも》に両方から押しつぶされる思いをし、やっと腰をかけ、またしばしばまったく腰をかけないでいることもあったが、それでも、嬉《うれ》しくてたまらなかった。返辞をされようとされまいとお構いなしに、声高く話をしかけた。馬の耳の動くのを眺めた。馬の耳って実に不思議な奴だ! 右へも左へも四方へ行き、前方へつっ立ち、横へ倒れ、後ろをふり向き、しかも放笑《ふきだ》さずにはおれないほどへんてこなふうでするのであった。彼は祖父をつねって、その耳に注意させようとした。しかし祖父にはそれが少しも面白くなかった。うるさいと言いながらクリストフに取り合わなかった。クリストフは考え込んだ。大人《おとな》と
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