井に踊る光の線を眺める。それは尽くることなき楽しみである。にわかに彼は声高く笑う。聞く者の心を喜ばせる子供の善良な笑い。母親は彼の方に身をかがめて言う、「まあどうしたの、坊や。」すると、見る人がいるのでなお努めて笑うのでもあろうか、彼はますます晴やかに笑う。母親はしかつめらしい様子をして、父親を覚まさないようにと、彼の口に指を一本あてる。けれども彼女の疲れてる眼は、我知らず笑っている。二人はいっしょにささやき合う……。と突然、父親は激しく怒鳴りつける。二人とも震え上がる。母親は罪を犯した小娘のように、急いで寝返りをして、眠ったふりをする。クリストフは寝床に深く身を埋めて、じっと息をこらす……。死のような沈黙。
しばらくすると、毛布の下にかがまっていた子供は、そっと顔を覗《のぞ》き出す。屋根の上には風見《かざみ》が軋《きし》っている。樋《とい》からは点滴《しずく》がたれている。御告《みつげ》の祷《いのり》の鐘が鳴る。風が東から吹く時には、対岸の村々の鐘が、ごく遠くからそれに響きを合わせる。木蔦《きづた》のからんだ壁に群がってる雀《すずめ》が、騒がしく鳴きたてる。その中には、一群の子供の
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