クリストフは幾度もそれら夜の音を聞いていた。しかしかつてこんなふうに聞いたことはなかった。ほんとうだ、何を人は歌う必要があるのか?……彼は心がやさしみと悲しみとでいっぱいになってくるのを感じた。牧場を、河を、空を、親しい星を、胸にかき抱きたかった。そして彼は叔父《おじ》ゴットフリートにたいする愛情に浸された。今は皆のうちで、ゴットフリートがいちばんよく、いちばん賢く、いちばんりっぱに思われた。いかに彼を見誤っていたかを考えた。自分に見誤られたために叔父は悲しんでいると考えた。彼は後悔の念でいっぱいになった。こう叫びたい気がした。「叔父さん、もう悲しんではいやだ! もう意地悪はしないよ。許しておくれよ。僕は叔父さんが大好きだ!」しかし彼はあえて言い得なかった。――そしていきなり、彼はゴットフリートの腕に身を投げた。しかし文句が出なかった。彼はただくり返した。「ぼくは叔父さんが大好きだ!」そして心こめてひしと抱きしめた。ゴットフリートは驚きまた感動して、「なんだ? なんだ?」とくり返し、同じく彼を抱きしめた。――それから、彼は立ち上がり、子供の手を取り、そして言った、「帰らなけりゃならない
前へ
次へ
全221ページ中189ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング