まで行くことができなかった。
幸いにも、音楽会がすむと、ハスレルのために催される夜曲《セレナード》へ連れてゆくために、祖父が彼を探しに来てくれた。夜になっていた。炬火《たいまつ》がつけられていた。管弦楽団の人々はみなそこに集まっていた。話は先刻聴いた霊妙な作品のことばかりだった。宮邸の前に着くと、人々は楽匠の窓下で静かに準備をした。ハスレルも他の人々も皆、これからやろうとすることをよく承知していたくせに、妙に取り澄ました様子を装っていた。夜の麗わしい沈黙のうちに、ハスレルのある名高い曲が奏し出された。ハスレルは大公爵とともに窓に現われた。人々は彼らの名誉のために歓声を揚げた。彼らは二人とも敬礼を返した。大公爵から遣《つか》わされた一人の従僕がやって来て、楽員たちを宮邸の中へ案内した。彼らはいくつかの広間を通っていった。広間には壁画が描かれていて、兜《かぶと》をかぶった裸体の男が現わしてあった。皆赤い色をして、挑戦的な身振りをしていた。空は海綿に以た大きな雲で覆われていた。また、鉄板の腰衣をまとった男女の大理石像もあった。人々は足音も聞えないほど柔かな絨緞《じゅうたん》の上を歩いていっ
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