人間が寄《よ》ってきたのを、すぐとかぎつけます。それで、ヘンゼルとグレーテルが近くへやってくると、ばあさんはさっそく、たちのわるい笑い方をして、
「よし、つかまえたぞ、もうにげようったって、にがすものかい。」と、さもにくてらしくいいました。
そのあくる朝もう早く、こどもたちがまだ目をさまさないうちから、ばあさんはおきだして来て、ふたりともそれはもう、まっ赤《か》にふくれたほっぺたをして、すやすやと、いかにもかわいらしい姿で休んでいるところへ来て、
「こいつら、とんだごちそうさね。」と、つぶやきました。
そこで、ばあさんは、やせがれた手でヘンゼルをつかむと、そのまま小さな犬ごやへはこんで行って、ぴっしゃり格子戸《こうしど》をしめきってしまいました。ですからヘンゼルが、中でいくらわめきたいだけわめいてみせても、なんのやくにもたちません。それから、ばあさんは、またグレーテルの所へ出かけて、むりにゆすぶりおこしました。そうして、
「このなまけもの、さあおきて、水をくんで来て、にいさんに、なんでもおいしそうなものを、こしらえてやるんだ。そとの犬ごやに入れてあるからの、せいぜいあぶらぶとりにふとらせなきゃ。だいぶ、あぶらののったところで、おばあさんがたべるのだからな。」と、わめきました。
こうきいて、グレーテルは、わあっと、はげしく泣き立てました。けれどなにをしたってむだでした。このたちのわるい魔女のいいなりほうだい、どんなことでも、グレーテルはしなければなりませんでした。
こんなしだいで、きのどくに、たべられるヘンゼルには、いちばん上等なお料理がつきました。そのかわり、グレーテルには、ザリガニのこうらが、わたったばかりでした。
まい朝まい朝、ばあさんは犬ごやへ出かけて行って、
「どうだな、ヘンゼル、指をだしておみせ。そろそろあぶらがのって来たかどうだか、みてやるから。」と、わめきました。
すると、ヘンゼルはたべあましのほそっこい骨を、一本かわりに出しました。ところで、ばあさんはかすみ目しているものですから、見わけがつかず、それをヘンゼルの指だとおもって、どうしてヘンゼルにあぶらがのってこないか、ふしぎでなりませんでした。
さて、それから、かれこれひと月たちましたが、あいかわらずヘンゼルは、やせこけたままでした。それで、ばあさんも、とうとうしびれをきらして、もうこ
前へ
次へ
全11ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
グリム ヴィルヘルム・カール の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング