てもいませんでした。すると、そこへひょっこり、こびとがへやの中にあらわれて、
「さあ、約束《やくそく》のものをもらいにきたよ。」と、いいました。
お妃はぎくりとしました。こどもをつれて行くことをかんにんしてくれるなら、そのかわりに、この国じゅうのこらずのたからをあげるから、といってたのみました。でも、こびとは、
「いんにゃ、生きているもののほうが、世界じゅうのたからのこらずもらうより、ましじゃよ。」と、いいました。
こういわれて、お妃は、おろん、おろん、泣きだしました。しくん、しくん、しゃくりあげました。それで、こびとも、さすがにきのどくになりました。
「じゃあ、三日のあいだ待ってあげる。」と、こびとはいいました。「それまでに、もし、わたしの名前をなんというか、それがわかったら、こどもはおまえにかえしてあげる。」
そこで、お妃は、ひと晩じゅう考えて、どうかして、じぶんの聞いて知っているだけの名前のこらずのなかから、あれかこれか、考えつこうとしました。それから、べつにつかいの者をだして、国じゅうあるかせて、いったい、この世の中に、どのくらい、どういう名前があるものか、いくら遠くでも
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