の上待ちきれないとおもいました。
「やいやい、グレーテル。」と、ばあさんは妹の子にむかってわめきたてました。「さあ、さっさといって、水をくんでくるのだ。ヘンゼルのこぞうめ、もうふとっていようが、やせていようが、なにがなんだって、あしたこそ、あいつ、ぶっちめて、にてくっちまうんだからな。」
やれやれ、どうしましょう。かわいそうに、この妹の子は、むりやり水をくまされながら、どんなにはげしく泣きじゃくったことでしょう。
「神さま、どうぞお助けくださいまし。」この子はさけび声をあげました。「いっそ森の中で、もうじゅうにくわれたほうが、よかったわ。それだと、かえってふたりいっしょに死ねたのだもの。」
「やかましいぞ、このがきゃあ。」と、ばあさんはいいました。「泣いたってわめいたって、なんにもなりゃあしないぞ。」
あくる日は、朝っぱらから、グレーテルはそとへ出て、水をいっぱいはった大|鍋《なべ》をつるして、火をもしつけなければなりませんでした。
「パンからさきにやくんだ。」と、ばあさんはいいました。「パンやきかまどはもう火がはいっているし、ねり粉もこねてあるしの。」
こういって、ばあさんは、かわいそうなグレーテルを、パンやきかまどの方へ、ひどくつきとばしました。かまどからは、もうちょろちょろ、ほのおが赤い舌を出していました。
「なかへ、はいこんでみなよ。」と、魔女はいいました。「火がよくまわっているか見るんだ。よければそろそろパンを入れるからな。」
これで、もし、グレーテルがなかにはいれば、ばあさん、すぐとかまどのふたをしめてしまうつもりでした。すると、グレーテルは中で、こんがりあぶられてしまうところでした。そこで、これもついでにもりもりやってしまうつもりだったのです。でも、グレーテルは、いちはやく、ばあさんのはらの中を見てとりました。そこで、
「あたし、わからないわ、どうしたらいいんだか。中へはいるって、どういうふうにするの。」と、いいました。
「ばか、このくそがちょう[#「がちょう」に傍点]。」と、ばあさんはいいました。
「口はこんなに大きいじゃないか、目をあいてよくみろよ。このとおり、おばあさんだってそっくりはいれらあな。」
こう言い言い、やっこら、はうようにあるいて来て、パンやきかまどの中に、首をつっこみました。ここぞと、グレーテルはひとつき、うしろからどんとつきました。はずみで、ばあさんは、かまどの中へころげこみました。すぐ、鉄の戸をぴしんとしめて、かんぬきをかってしまいました。うおッ、うおッ、ばあさんはとてもすごい声でほえたけりました。グレーテルはかまわずかけだしました。こうして、罰《ばち》あたりな魔女は、あわれなざまに焼けただれて死にました。
グレーテルは、まっしぐらに、ヘンゼルのいる所へかけだして行きました。そして、犬ごやの戸をあけるなり、
「ねえヘンゼル、あたしたちたすかってよ。魔女のばあさん死んじゃってよ。」と、さけびました。
戸があくと、とたんに、ヘンゼルが、鳥がかごからとび出したように、ぱあっととび出して来ました。
まあ、ふたりは、そのとき、どんなにうれしがって、首っ玉にかじりついて、ぐるぐるまわりして、そしてほほずりしあったことでしたか。こうなれば、もうなんにもこわがることはなくなりましたから、ふたりは魔女のうちの中に、ずんずんはいって行きました。うちじゅう、すみからすみまで、真珠《しんじゅ》や宝石のつまった箱だらけでした。
「こりゃ、小砂利《こじゃり》よりずっとましだよ。」と、ヘンゼルはいって、かくしの中に入れられるだけ、たくしこみました。すると、グレーテルも、
「あたしも、うちへおみやげにもってくわ。」と、いって、前掛にいっぱいにしました。
「さあ、ここらでそろそろ出かけようよ。」と、ヘンゼルはいいました。「なにしろ、魔女の森からぬけ出さなくては。」
それで、二三時間あるいて行くうちに、大きな川の所へ出ました。
「これじゃあ渡れやしない。」と、ヘンゼルはいいました。「橋にも、いかだにも、まるでわたるものがないや。」
「ここには、渡し舟も行かないんだわ。」と、グレーテルがいいました。
「でもあすこに、白いかもが一わおよいでいるわね。きっとたのんだらわたしてくれてよ。」
そこで、グレーテルは声をあげてよびました。
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「かもちゃん かもちゃん 小がもちゃん、
グレーテルとヘンゼルが 来たけれど、
橋もなければ いかだもない、
おまえの白い おせなかに のせてわたして くださいな。」
[#ここで字下げ終わり]
かもは、さっそく来てくれました。そこで、ヘンゼルがまずのって、小さい妹に、いっしょにおのりといいました。
「いいえ。」と、グレーテルはこたえました。「そんなにのっ
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