つきました。はずみで、ばあさんは、かまどの中へころげこみました。すぐ、鉄の戸をぴしんとしめて、かんぬきをかってしまいました。うおッ、うおッ、ばあさんはとてもすごい声でほえたけりました。グレーテルはかまわずかけだしました。こうして、罰《ばち》あたりな魔女は、あわれなざまに焼けただれて死にました。
 グレーテルは、まっしぐらに、ヘンゼルのいる所へかけだして行きました。そして、犬ごやの戸をあけるなり、
「ねえヘンゼル、あたしたちたすかってよ。魔女のばあさん死んじゃってよ。」と、さけびました。
 戸があくと、とたんに、ヘンゼルが、鳥がかごからとび出したように、ぱあっととび出して来ました。
 まあ、ふたりは、そのとき、どんなにうれしがって、首っ玉にかじりついて、ぐるぐるまわりして、そしてほほずりしあったことでしたか。こうなれば、もうなんにもこわがることはなくなりましたから、ふたりは魔女のうちの中に、ずんずんはいって行きました。うちじゅう、すみからすみまで、真珠《しんじゅ》や宝石のつまった箱だらけでした。
「こりゃ、小砂利《こじゃり》よりずっとましだよ。」と、ヘンゼルはいって、かくしの中に入れられるだけ、たくしこみました。すると、グレーテルも、
「あたしも、うちへおみやげにもってくわ。」と、いって、前掛にいっぱいにしました。
「さあ、ここらでそろそろ出かけようよ。」と、ヘンゼルはいいました。「なにしろ、魔女の森からぬけ出さなくては。」
 それで、二三時間あるいて行くうちに、大きな川の所へ出ました。
「これじゃあ渡れやしない。」と、ヘンゼルはいいました。「橋にも、いかだにも、まるでわたるものがないや。」
「ここには、渡し舟も行かないんだわ。」と、グレーテルがいいました。
「でもあすこに、白いかもが一わおよいでいるわね。きっとたのんだらわたしてくれてよ。」
 そこで、グレーテルは声をあげてよびました。

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「かもちゃん かもちゃん 小がもちゃん、
グレーテルとヘンゼルが 来たけれど、
橋もなければ いかだもない、
おまえの白い おせなかに のせてわたして くださいな。」
[#ここで字下げ終わり]

 かもは、さっそく来てくれました。そこで、ヘンゼルがまずのって、小さい妹に、いっしょにおのりといいました。
「いいえ。」と、グレーテルはこたえました。「そんなにのっ
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