した。
ラプンツェルは、まだ一|度《ど》も、男《おとこ》というものを見《み》たことがなかったので、今《いま》王子《おうじ》が入《はい》って来《き》たのを見《み》ると、初《はじ》めは大変《たいへん》に驚《おどろ》きました。けれども王子《おうじ》は優《やさ》しく話《はな》しかけて、一|度《ど》聞《き》いた歌《うた》が、深《ふか》く心《こころ》に泌《し》み込《こ》んで、顔《かお》を見《み》るまでは、どうしても気《き》が安《やす》まらなかったことを話《はな》したので、ラプンツェルもやっと安心《あんしん》しました。それから王子《おうじ》が妻《つま》になってくれないかと言《い》い出《だ》すと、少女《むすめ》は王子《おうじ》の若《わか》くって、美《うつく》しいのを見《み》て、心《こころ》の中《うち》で、
「あのゴテルのお婆《ばあ》さんよりは、この人《ひと》の方《ほう》がよっぽどあたしをかわいがってくれそうだ。」
と思《おも》いましたので、はい、といって、手《て》を握《にぎ》らせました。少女《むすめ》はまた
「あたし、あなたとご一しょに行《い》きたいんだが、わたしには、どうして降《お》りたらいいか分《わか》らないの。あなたがお出《でい》[#「お出《でい》」はママ]になるたんびに、絹紐《きぬひも》を一|本《ぽん》宛《ずつ》持《も》って来《き》て下《くだ》さい、ね、あたしそれで梯子《はしご》を編《あ》んで、それが出来上《できあが》ったら、下《した》へ降《お》りますから、馬《うま》へ乗《の》せて、連《つ》れてって頂戴《ちょうだい》。」
といいました。それから又《また》、魔女《まじょ》の来《く》るのは、大抵《たいてい》日中《ひるま》だから、二人《ふたり》はいつも、日《ひ》が暮《く》れてから、逢《あ》うことに約束《やくそく》を定《き》めました。
ですから、魔女《まじょ》は少《すこ》しも気《き》がつかずに居《い》ましたが、或《あ》る日《ひ》、ラプンツェルは、うっかり魔女《まじょ》に向《むか》って、こう言《い》いました。
「ねえ、ゴテルのお婆《ばあ》さん、何《ど》うしてあんたの方《ほう》が、あの若様《わかさま》より、引上《ひきあ》げるのに骨《ほね》が折《お》れるんでしょうね。若様《わかさま》は、ちょいとの間《ま》に、登《のぼ》っていらっしゃるのに!」
「まア、この罰当《ばちあた》りが!」と魔
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