ので、やっとたがをはめて、おさえていたのです。たいせつな王さまが、もとの姿にかえったので、きょうさっそく、八頭だての馬車が、おむかえにきたのです。忠義もののハインリヒは、おふたりを馬車のなかに入れてあげて、じぶんはまた馬車のうしろにしゃんと立ちながら、ご主君のまた世に出たことをおもって、ぞくぞくするほどうれしくてなりませんでした。
さて馬車がすこしはしりだしたとおもうころ、王さまのお耳のうしろで、ぱちり、ぱちり、なにかはじける音がしました。わかい王さまはそのとき、うしろをふりかえっていいました。
[#ここから4字下げ]
「ハインリヒ、馬車がこわれるぞ。」
「いいえ、いいえ お殿《との》さま、
あれは馬車では ござんせぬ。
せっしゃのむねに はめたたが[#「たが」に傍点]。
殿さま、げえろ[#「げえろ」に傍点]にならしゃって、
ぎゃあぎゃあ、泉でなかしゃるで、
はりさけそうな このむねを、
むりにおさえた そのたが[#「たが」に傍点]が。」
[#ここで字下げ終わり]
それでも、ぱちり、ぱちり、また二どもはじける音がしました。わかい王さまは、そのたんびに馬車がこわれるのではないかとおもいました。けれども、それはやはり、ご主君がにんげんにかえって、たのしい日をおくられることになったので、ふさがっていたハインリヒのむねが、ひらけたため、胸のたが[#「たが」に傍点]がはれつして、とびちる音でございました。
底本:「世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人」小峰書店
1949(昭和24)年2月20日初版発行
1949(昭和24)年12月30日4版発行
※原題の「〔DER FROSCHKO:NIG ODER DER EISERNE HEINRICH〕」は、ファイル冒頭ではアクセント符号を略し、「DER FROSCHKONIG ODER DER EISERNE HEINRICH」としました。
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
入力:大久保ゆう
校正:浅原庸子
2004年4月29日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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