、ぼろ人形をそば[#「そば」は底本では「ぞば」]におきました。子ねこにもあいたがりましたが、病気がうつるのを心配してがまんしました。すこし気分がいいと、手紙を書きたがりました。けれど、そのうちに、病状はわるくなり、意識が不明となり、うわ言をいうようになりました。バンクス先生は、一日に二回も来ました。メグは、机のひき出しに電報用紙を用意しました。
 十二月一日は、冬らしい日で、風が吹き雪がふりました。その朝、バンクス先生は診察をすますといいました。
「おくさんが御主人のそばをはなれられるようなら、およびしたほうがよろしいです。」
 ハンナは、うなずきました。メグは、イスにぐったりたおれました。まっさおになったジョウは、電報用紙をひっつかんで、吹雪のなかへとび出していきました。まもなく帰って来たとき、ローリイが来て、おとうさんがまた快方にむかったという手紙を持って来ました。けれど、ジョウの顔が悲痛にあふれているので、
「どうしたの? ベスわるいの?」
「ええ、おかあさんに電報うって来たの。もうあたしたちの顔がわからないのよ。おとうさんもおかあさんもいらっしゃらないし、神さまも遠くへいっておしまいになった!」
 ジョウの顔に、涙がたきのように流れました。よろけそうなので、ローリイはその手をつかみ、なにかなぐさめの言葉をかけようとしたが、言葉もないので、ジョウの顔をやさしくなでてやりました。ジョウは無言の同情を心に感じ、やっとおちついて、感謝にみちた顔をあげました。
「ありがとう。もうだいじょうぶ、万一のことがあっても、こらえられるわ。」
「ぼくはベス死ぬと思わない。あんなにいい子だし、ぼくたちこんなにかわいだっているんだもの、神さまがつれていらっしゃるわけはない。」
「やさしい、かわいい子は、いつでも死んでしまうんだわ。」
「きみ、つかれてるんだ、心ぼそく思うの、きみらしくないよ。ちょっと待ってて。」
 ローリイは、階段をかけあがり、まもなくいっぱいのぶどう酒を持って来た。ジョウはにっこり笑って、ベスの健康のために飲むわといって飲みました。
「あなたいい医者ね。そして、ほんとに気持のいいお友だちね、どうして、お返しできるかしら?」
「いずれ勘定書を出すよ。そして、今夜はぶどう酒より、もっときみの心をあたためるものをあげるよ。」
「なんなの?」
「昨日、電報うったのさ。そう
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