)をするためにヴェルサイユの宮殿へ行った。オルレアン公が親元《おやもと》をしていたので、祖母はいかにも尤《もっと》もらしく、まだ負債を返済していないことを手軽に言訳してから、公爵と勝負をはじめた。祖母は三枚の骨牌札を選んで順じゅんにそれを賭けて行って、とうとうソニカ(一番手っ取り早く勝負のきまる骨牌戯)で三枚とも勝ったので、祖母は前に負けただけの金額を全部回収してしまったのだ」
「実に僥倖《しあわせ》だな」と、一人の客が言った。
「作り話さ」と、ヘルマンが批評をくだした。
「たぶん骨牌に印《しるし》でも付けておいたのではないか」と、三番目に誰かが言った。
 トムスキイは断乎《だんこ》たる口ぶりで答えた。
「僕はそうは考えないね」
「なんだ」と、ナルモヴが言った。「君は三枚ともまぐれ当たりに勝つ方法を知っているおばあさんが生きているのに、彼女からその秘密を引き出し得なかったのか」
「むろん、僕もいろいろに抜け目なくやっては見たのだがね」と、トムスキイは答えた。「なにしろ、祖母には四人の息子があって、そのうちの一人が僕の父だが、四人とも骨牌では玄人《くろうと》の方であったし、その秘密を明か
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