かな眼をした娘が小間物屋から来たといって、リザヴェッタに一通の手紙をとどけに来た。リザヴェッタは何かの勘定の請求書ででもあるのかと、非常に不安な心持ちで開封すると、たちまちヘルマンの手蹟に気がついた。
「間違えているのではありませんか」と、彼女は言った。「この手紙は私へ来たものではありません」
「いえ、あなたへでございます」と、娘は抜け目のなさそうな微笑を浮かべながら答えた。「どうぞお読みなすって下さい」
リザヴェッタはその手紙をちらりと見ると、ヘルマンは会見を申し込んで来たのであった。
「まあ、そんなこと……」と、彼女はその厚かましい要求と、気違いのような態度にいよいよ驚かされた。「この手紙は私へのではありません」
そう言うと、彼女はそれを引き裂いてしまった。
「では、あなたへの手紙でないなら、なぜ引き裂いておしまいになったのでございます」と、娘は言った。「わたくしは頼まれたおかたに、そのお手紙をお返し申さなければなりません」
「もうこれから二度と再び手紙などを私のところへ持って来ないがようござんす。それから、あなたに使いを頼んだかたに、恥かしいとお思いなさいと言って下さい」と、
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