のを、私はよく存じて居るからでございます。そしてそのやうな事を致しますのが、私の智慧なのでございます。」
「お前は恐れてゐるな。」老人の眼はかう云つた。さうしてその眼は一瞬の怒に煌いた。
「時によりますと夜、あなたが秦皮樹の杖を持つて、本をよんでお出になりますと、私は戸の外に不思議な物を見ることがございます。灰色の巨人《おほびと》が榛の間に豕《ゐのこ》を駆つて行くかと思ひますと、大ぜいの矮人《こびと》が紅い帽子をかぶつて、小さな白い牝牛を、其前に逐つて参ります。私は灰色の人ほど、矮人を怖くは思ひませぬ。それは矮人が此家に近づきますと、牛の乳を搾つて其泡立つた乳を飲み、それから踊りをはじめるからでございます。私は踊の好きな者の心には、邪《よこしま》のないのをよく知つて居ります。けれども私は矢張矮人が恐しうございます。それから私は、あの空から現れて、静に其処此処をさまよひ歩く、丈の高い、腕の白い、女子《をなご》たちも怖うございます。あの女子たちは百合や薔薇をつんで、花冠に致します。そしてあの魂のある髪の毛を左右に振つてゐるのでございます。其女子たちの互に話すのをききますと、その髪は女子たち
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