なら、俺も、こんな日に死にてえもんだ!」
「はゝゝゝ、我家の婆さんが、何を云はつしやることやら。縁起《えんぎ》でもねえ、……しかし、婆さんや、お迎が来たら、そんな、あとの心配なんかしねえで、いつでも心持よう行つてくらつしやい、や。どんな風雨の時だつて、俺、お前のこと半焼のまゝになんかして置かねえから、の。」
「さうだとも、さうだとも。」
「みんな、そんな話し、もう止《や》めさつしやい。信じんが何よりだ。後生《ごしやう》さへ願つてゐれば、それでいゝんだつてこんだ。……なむあみだぶ、なむあみだぶ。」
少し離れたところで、「あゝあゝ」と大きなあくびをしたものがあつた。と思ふと、また、それより別なところで、「はつはつは」と大笑ひした者があつた。
「おどけ者の與平次爺さんが居なくなつたんで急に村が淋《さび》しくなるこんだらう。」
「いつも、馬鹿ばつか云つて、みんなを笑はしてゐさしたつけが、ほんに、あんな頓智《とんち》のいゝ人つてあつたもんでねえ。」
「さう云や、先だつても、飛んだ可笑《をかし》なことを云つてゐさしたつけよ。だしぬけに、『死なば今だ。』つて云はつしやるんだ。『どうして、え?』つて
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