かをむけました。ローリイは、エミイの来たのに気がつかず、氷のあつさをしらべるために、そのひびきを聞きわけながら、用心ぶかく岸にそってすべっていきました。ローリイは、角をまがるとき、
「岸について来なさい。まんなかはあぶない。」
 そういって、すがたが見えなくなりました。
 ジョウが、すべって、その角までいったとき、エミイはずっとはなれたところで、川のまんなかへすべっていきました。ジョウは、みょうな心さわぎをおぼえましたが、ふいに氷のさける、ばりっという音とともに水けむりをたて、エミイがりょう手をあげ、悲鳴とともに落ちこむのを見ました。その悲鳴に、ジョウは心臓がとまると思うくらい、おどろきました。ローリイをよぼうとしましたが声が出ません。すると、なにかが、じぶんのそばを走ったと思うと、
「ぼうをもって来て、早く、早く!」と、ローリイのどなる声が聞えました。
 それから、ジョウは、まるで夢中でした。ただし冷静なローリイのさしずのままになって、おびえているエミイを救いあげること[#「こと」は底本では「ことと」]ができました。
 ふるえて、ぼとぼとしずくをたらしながら泣いているエミイを、二人は
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