、ごめんなさいね、あたし、ほんとうにわるかったわ。」と、あやまりました。
ジョウは、ひややかに、
「許してあげるものか。」と、答え、エミイにとりあいませんでした。
だれも、この大事件のことを口にしませんでした。ジョウがじぶんの怒りをやわらげるまで、なにをいってもしようがないからです。そんなわけで、その晩はたのしくなく、みんなだまって針仕事をしました。おかあさんが、おもしろい物語を話しても、なにかもの足りなくて、家庭の平和は、すっかりみだされていました。[#「いました。」は底本では「いました。いました」]おもくるしい気分は、メグとおかあさんがうたっても晴れませんでした。
おかあさんは、ジョウにおやすみなさいのキッスをしたとき、やさしい声で、
「ねえ、怒りを明日まで持ち越さないように、今夜中にきげんをなおしましょうね。おたがいに、ゆるし合い助け合いましょう。明日からは、またたのしくね。」と、ささやきました。
ジョウは、おかあさんの胸に、顔をうずめました。悲しみと怒りを、涙で流したかった。けれど、あまりにいたでは深く、とうとう頭をふり、エミイに聞えよがしに、
「あんまりひどいんですも
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