やうるさくして、書けやしません。」と、おかあさんは手紙の書きそこないを消しながらいいました。
それで、ちょっと静まりました。ハンナが来て、熱いパイを二つおいて、出ていきました。姉妹たちのいく道は遠く寒く、三時前までに帰れないので、これはおべんとうでもあり、また、手をあたためることもできました。それでこのパイのこと「マフ」ともよんでいました。
「では、かあさんいってまいります。今朝はあたしたちだだっ子でした。でも、天使になって帰って来ます。」
ジョウは、そういって、メグといっしょに出かけました。町角でふりかえると、いつも窓でにっこり笑うおかあさんの顔があり、それが励ましになるのでした。二人は今朝もふりかえり、おかあさんの笑顔を見ると、元気になろうとつとめ、しばらく歩いてから、べつべつの道をいきました。メグは保姆の仕事、ジョウはマーチおばさんのところへはたらきにいくのでした。
おとうさんが、不幸な友人を救おうとして財産を失くしたとき、二人はすこしでも家のためになりたくてはたらき、それからずっとはたらいているのです。メグの給料はわずかで、しかもまい日キング家で、年上の姉妹たちが、ぜいたくをしているのを見るので、だれよりも貧乏をつらがっていました。ジョウはびっこのマーチおばさんの世話をしますが、気みじかのおばさんと、よく気が合いました。それに、死んだおじさんの文庫がすばらしく、おばさんが昼寝をしたり、来客でいそがしいときさっそく文庫にはいりこんで、詩、歴史、旅行記だのに読みふけりました。それはいいとしても、思うさまかけまわったり、馬にのったりできないのは、なやみの種でした。
ベスは、はにかみ屋で、学校へもいけないほどでした。それでおとうさんが勉強を見ていましたが出征しなすってからはおかあさん、かあさんが軍人後援会へいくようになってからは、ひとりで勉強します。性質は勤勉で家事が好きで、ハンナを助けて家をきれいにしますが、まだ子供で、人形と遊ぶことが、なによりのたのしみでした。けれど、このベスにも、苦になることがありました。それは、音楽好きなのに、よいピアノもないし、音譜もないことで、音楽の勉強が思うようにできないので、涙をながすことがときどきありました。
エミイのつらいことには、鼻が美しくないことで、エミイにいわせると、あかんぼのとき、ジョウが手をすべらして炭取のな
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