ウが、じぶんは読めてもしゃべれないだけれど、ちょっと話してみてほしいといいますと、ローリイは、フランス語でいいました。
「あのかわいいスリッパはいた人はだれですか?」
 ジョウは、わかったので、すぐに答えました。
「あれは姉のマーガレットです。あなたは、わたしのねえさんをかわいいと思いますか?」
「ええ、おねえさんは、なんとなくドイツの少女を思わせます。いきいきして、それでしとやかで、りっぱな淑女みたいに踊りますね。」
 ジョウは、姉をほめられてうれしく、ぜひメグに話してやろうと思いました。ローリイは、もうすっかりはにかみもせず、心を開いて話し、ジョウも、今は服のことなど忘れて、快活ないつものジョウになり、ローリイが好きになりました。それで、ローリイのことを、姉妹に話してやるために、顔かたちや身体つきなどをよく憶えておこうと思っていくども見なおしました。けれど、年はいくつでしょう? ジョウは、おいくつといいそうにしましたが、やっとこらえて、遠まわしに尋ねることにしました。
「もうじき大学へいらっしゃるんでしょう?」
「まだ二三年はだめです。十七にならなくてはいけません。」
「では、まだ十五ですか?」
「来月、十六です。」
「あたしは大学へいきたいけれど、あなたはいきたそうではありませんのね。」
「ぼくはいやです。ぼくはイタリイに住んでじぶんの好きなように暮したい。」
 ジョウは、ローリイのいう、その好きなように暮したいということを、くわしく聞きたいと思いましたが、眉をひそめてふきげんに見えたので、気をかえさせようと思って、足拍子をとりながら、
「ああ、いいポルカね。あなたなぜいってダンスなさらないの?」と、尋ねました。
「あなたもいけば。」
「あたしはだめ。あたし姉さんに踊らないといったの、なぜって、いうと……」
 ジョウが、いおうか、笑ってすまそうかとしていると、ローリイは、しきりにわけを尋ねます。だれにもいわないならばと念をおして、
「服にやけこがしがあるんです。あたしわるいくせがあって、よくやけこがしするの。」
 ローリイは笑いませんでした。
「そんなこと平気ですよ。それじゃ、あっちの細長い広間で踊りましょう。だれにも見られないから。」
 ジョウは感謝して、よろこんでついていき、だれもいない、その広間で、ポルカを踊りました。ローリイは、ダンスがじょうずで、ドイ
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