がはこび、ジョウがそれを贈るために、こっけいな演説をしました。ベスは、雪姫の贈りもののおいしいぶどうを食べて、
「あたし幸福でいっぱい、これでおとうさんがいらしたら、もうどうしようもないわ。」と、いいました。
「あたしも幸福」と、ジョウも、前からほしがって、やっと手に入れた二冊の本アンデインとシントラムのはいっているかくしをたたきながらいいました。
「あたしだって、そうよ。」と、エミイはおかあさんからいただいたマドンナとその子の版画をながめながらいいました。
「もちろん、あたしも。」と、メグは生れてはじめて手にした絹のドレスにさわりながらいいました。それはローレンス氏が、くれるといってきかなかったのです。
「かあさんだって、そうですよ。」と、おかあさんも満足そうにいって、今しがた娘たちが胸にとめてくれたブローチをなでました。
 ところが、それから三十分の後に、まるで小説にでもありそうな思いがけないうれしいことが起りました。それは、ローリイが興奮して客間をのぞき、
「さあ、マーチ家へまたクリスマス・プレゼントがとどきましたよ。」と、いって、すぐに、すがたをけしたことからはじまりました。みんなは、はじかれたように、なにごとかと、ローリイの言葉にかくされたものを考えていると、首まきをしたせの高い人がもう一人のせの高い人の腕によりかかりながらあらわれました。あっと、みんなはさけんでおしよせ、たちまちとりかこみ、すがりつき、よろこびのうずが家のなかにまきかえりました。ああ、その人はおとうさんでした。そして、つづく笑い声、あんまりうれしいので、みんながいろんな、らちもないしくじりをしたのが、よけいおかしく思われました。やっと笑い声がしずまると、ブルック氏はローリイをうながして帰り、おとうさんとベス、二人の病人はしずかにソファにかけました。
 おとうさんは、上天気になったので、医者が帰宅を許してくれたこと、それで、わざとふいうちに帰って来たこと、ブルック氏がよく世話をしてつれて来てくれたことなどを話しました。
 ところで、その日のごちそうは、マーチ家では、はじめてのすばらしいクリスマスのごちそうで、七面鳥のむし焼き、ほしぶどういりのプディングゼリイなど、ハンナができるかぎり腕をふるいました。そして、お客はローレンス老人、ローリイ、それからブルック氏で、健康を祝して乾杯し、語りあい
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