でした。おかあさんは病気で、あかんぼうは泣き、青い顔のひもじい子供たちは、一枚の蒲団にくるまってかたまっていました。みんながはいっていくと、子供たちは目を大きく見はり、青ざめた唇にほほえみをうかべました。
「ああ、神さま! 天使たちがいらした!」と、そのあわれな女は、うれし泣きに泣きながらさけびました。ジョウは、
「頭をかけ手袋をはめたおかしな天使でしょう。」といって、家中の者を笑わせました。
 たちまち、この家にやさしい精霊がはたらきだしたように思われました。薪を運んできた。ハンナは火をおこし、古い帽子や、じぶんの肩かけで窓のやぶれをふさぎました。おかあさんは、母親にお茶やかゆをあたえ、あかんぼうをじぶんの子供みたいに着物を着せ、これからもお世話をしますと約束してなぐさめました。姉妹たちは、そのあいだにテーブルの支度をし、子供たちを炉のまわりにすわらせ、お腹のすいている小鳥たちを養うように食べさせました。
「ああ、おいしい、子供の天使!」と、子供たちは食べながらいって、紫色にこごえた手をあたたかい火であたためました。
 帰ってから、姉妹たちは、パンとミルクしか食べませんでしたが、それはたのしい朝御飯でした。おそらくこの市で、この少女たちより、[#「、」は底本では「。」]幸福であった人はなかったでしょう。
 おかあさんが、すこしおくれて帰って来たとき、プレゼントはもう用意され、ベスの陽気な行進曲とともに、メグがおかあさんを、ていねいに設けの席につけました。おかあさんは、ほほえみをたたえて、プレゼントについている札を読み、スリッパをすぐにはき、ハンケチにコロン水をかけて、かくしにしまい、ばらの花を胸にさし、きれいな手袋をはめました。それから、たのしい談笑とくちづけがつづき、よい思い出としてみんなの心に残ることばかりでした。
 やがて、めいめい仕事をはじめました。仕事は晩のお芝居の支度で、金をかけずにあり合せのもので、気のきいた小道具や衣装をつくるのでした。
 その晩、招かれた十人あまりの少女たちが、上等席のベッドの上にならびました。まもなくベルがなり幕があがりました。「魔の森」です。鉢植や箪笥を利用して森と洞穴をあらわしました。魔女が、洞穴の炉にかかっている鍋をのぞきこんでいると、悪漢ユーゴーが腰の剣をがちゃつかせて登場しました。ユーゴーは、ロデリゴへの憎しみと、ザラ
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