は、「クリスマス、おめでとう。」といって、メグを起し、枕の下を見てごらんなさいといいました。ありました。やはり、あかい絵のある緑の表紙の本で、おかあさんの手でみじかい言葉が書かれていました。まもなく、ベスとエミイが目をさまし、枕の下に本を見つけました。一冊は鳩羽色、一冊は空色の表紙でした。みんなは起きなおり、本をながめて話し合いました[#「ました」は底本では「ましに」]が、そのうちに東の空がばら色に染ってきました。
メグがいいました。
「まい朝、目がさめたらすこしずつ読んで、その日一日、あたしを助けてもらいましょう。」
メグが読みはじめると、ジョウは片手をメグの身体にかけ、ほおをすりよせました。ほかの二人もしずかに頁をくりました。三十分ばかりして、メグはジョウといっしょに、おかあさんにプレゼントのお礼をいいに階下へかけおりていきました。
「[#「「」は底本では欠落]おくさまは、どこかの貧乏な人がおもらいにきたので、なにかいるものを見に、すぐお出かけになりました。おくさまみたいに、食物や着物や薪までおやりになる方はありませんよ。」と、ハンナが答えました。ハンナは、メグが生れてから、この家族といっしょに暮してきて、女中というよりは、友だちとしてあつかわれているのです。[#「。」は底本では「。」」]
「すぐにお帰りになると思うわ。だから、お菓子をやいて、すっかり用意しておいてね。」と、メグはかごにいれてソファの下にかくしておいたプレゼントを、いざというときに、とり出せるようにしてから、
「あら、エミイのコロン水の瓶は?」
「エミイが、リボンをかけるとかといって、もっていったわ。」と。ジョウがいいました。
「ねえ、あたしのハンケチいいでしょう。ハンナが洗ってアイロンをかけてくれたのよ。マークはあたしがつけたの。」とベスは、ぬいとりの文字をほこらしげにながめました。
「まあ、この子は、エム・マーチでなく、マザアなんてぬいとりして、おかしいね。」と、ジョウがいうと、ベスはこまったような顔をして、
「いけないの?、エム・マーチだと、姉さんもおなじだから。」
「いいのよ、それならまちがいっこないから。[#「から。」は底本では「か。ら」]きっとおかあさんの気にいるわ。」と、メグは、ジョウには顔をしかめ[#「しかめ」は底本では「しかあ」]、ベスには笑顔を見せていいました。そのとき、
前へ
次へ
全131ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
水谷 まさる の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング