ョウが去ってしまうと、おかしくてたまらなくて、ひとりで笑ってしまいました。
「かわいそうに、みんなこまっているでしょう。でも、そうつらいとも思っていないだろうし、後のためにもなることだから。」と、つぶやいて、おかあさんはじぶんで用意しておいたもっとおいしい食物をとり出し、運ばれた食事はわからないようにしまつして、食べたことにしておいたので、みんなはうれしがりました。これはおかあさんらしい、ちょっとしたうそでした。
 ところで、階下ではいろんな不平が起りました。食事の失敗に、コック長はひどくくやしがりました。ジョウは、
「いいわ。お昼の食事は、あたしが女中になって用意するわ。ねえさんはおくさんになって、お客さまの相手をしてちょうだい。」と、いって、ローリイをよぶことを提案しました。
 これは、賛成されました。そこで、ジョウは、さっそくローリイに招待状を書いて郵便局へ出しておきました。けれど、ジョウのうで前は、すこしあぶないようでした。メグが心配すると、
「だいじょうぶ、コンビーフも、じゃがいももある。つけ合せに、アスパラガスとえびを買ってくるわ。それから、ちさでサラダをつくりましょう。つくりかたの本を見ればいいわ。デザートは、白ジェリイといちご、もっとぜいたくすれば、コーヒーも出すのよ。」
「ジョウ、あなたは。しょうがパンとキャンディだけしかつくれないじゃないの。あたしこの御馳走には関係しないわよ。だって、あなたが勝手にローリイをよんだんだから。」
「おねえさんは、ローリイを、そらさないようにして下さればいいわ。でもこまったら、なんでも教えて下さるでしょうねえ?」と、ジョウはむっとしました。
「ええ、でもあたしいろんなこと知らないわ。おかあさんに、尋ねてからにするほうがいいわ。」
 ジョウは、じぶんのうでをうたがうようなことをいわれたので、ぷりぷり怒って部屋を出て、おかあさんへ相談にいきました。
「好きなようになさい。おかあさんのじゃまをしないでね。あたしは食事は外でします。家のことなどかまっていられません。今日はお休みです。本を読んだり、手紙を書いたり、お友だちをたずねたりして過します。」
 いつもいそがしいおかあさんが、今日は朝からゆれイスにかけて本を読んでいるふしぎなありさまと、けんもほろろな、その言葉に、ジョウは、
「へんだわ。おかしいわ。」と、ひとり言をいい
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