奥さんや、だんなさんをあさりまわっている娘らしくない娘よりも、幸福なえんどおい娘でいたほうが、よろしい。なにも心配することはありません。メグ、ほんとに愛のある人は、相手の貧乏などにひるむことはありません。かあさんの知っているりっぱな婦人のなかには、むかしは貧乏だったかたがいくらもあります。けれど、愛をうける、ねうちのあるかたのばかりだったから、人がえんどおい娘にしておかなかったのです。そういうことは、なりいきにまかせておけばいいので、今は、この家庭を幸福にするように努め、やがて結婚の申しこみをうけたらばその新らしい家庭にふさわしい人になるし、もしかしこい結婚ができなければ、この家に満足して暮すのです。それから、もう一つ、よく覚えていてほしいのは、かあさんはいつでもあなたが秘密をうち明けることのできる人ということ、また、おとうさんは、あなたがたのよいお友だちであるということです。そして、おとうさんとあたしは、あなたがたが結婚しても、独身でいても、あたしたちの生活のほこりであり、なぐさめであることを信じ、また望んでもいるということをね。」
 メグとジョウは、
「おかあさん、あたしたちきっとそうなります!」と、ほんとに、心からさけんで、おやすみなさいをいいました。

          第十 ピクイック[#「ピクイック」は底本では「ピックイク」]・クラブと郵便局

 春がめぐって来ると、いろいろと新らしいたのしみがはやり、しだいに日がのびるにしたがって、長い午後の時間に、いろいろの仕事やあそびができるようになりました。
 庭に手入れをしなければなりませんでした。姉妹はめいめい四分の一の地所をもらって、じぶんのすきなようにやりました。ハンナが、どれがどのかたの庭か、支那から見たってわかるといいましたが、まさにそのとおりで、四人の趣味はひとりひとりちがっていました。
 メグは、ばらとヘリオトロープと天人花と、かわいいオレンジの木をうえました、ジョウの花壇には、二シーズン、けっしておなじじものがうえられたことがなかったのは、たえず新らしい実験を試みるからで、今年は日まわりをうえるはずで、その種子はにわとりと、そのひよこの餌にするためでした。ベスは、スイート・ピイ、[#「、」は底本では「・」]もくせい草、ひえん草、なでしこ、パンジイ、よもぎなど、古風な香りゆたかな花や、小鳥の餌に
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