て、それ以上なんにもいえませんでした。
『わたしは、ちゃんと知っているんだよ。お前は舞踏会に行きたいのだろう?』
シンデレラは、ただうなずきました。
『よしよし、お前はいい子だから、舞踏会へ行けるようにしてあげよう。』
シンデレラは、ふしぎそうな顔をして、お婆さんの顔を眺めながら、もしほんとならどんなにうれしいだろうと思いました。
『でも、あたし、服もありませんし、靴もありませんし……』
お婆さんは、シンデレラがそういいかけると、
『いいんだよ、いいんだよ。そんなこと、すこしも心配いらないんだよ。まあ、いっしょに来てごらん。』
と、いって、そのまま先に立って出て行きます。
シンデレラは、ふらふらと、その後へついて行きました。
舞踏会
やがてお婆さんは、自分の家へシンデレラを連れて行くと、さっそくいいました。
『さあ、畠《はたけ》へ行って、南瓜《かぼちゃ》を一つとっておいで。それがお前さんを、舞踏会へ連れて行ってくれるんだよ。』
シンデレラは、すぐに畠へ行って、南瓜を一つとって来ましたが、どうしてこの南瓜が舞踏会へ連れて行ってくれるのか、考えてもわかりませんでした。
ところが、お婆さんは、その南瓜の右と左をすこし切り捨てて、なかの種をとり出して、杖でぽんとたたきました。すると、それは金色《こんじき》の美しい四輪馬車に変りました。
『あっ!』
シンデレラは、思わずびっくりして声を出しました。
お婆さんは、にこにこ笑いながら、おなじように杖一本で、箱のなかにいた六匹の二十日鼠《はつかねずみ》を六匹のたくましい馬に変え、鼠をいきな馭者《ぎょしゃ》に変え、六匹の蜥蜴《とかげ》を六人のりっぱなお供に変えました。
『さあ、これで舞踏会行らしい乗物の支度ができたよ。どうだね、うれしいだろう?』
『ええ、うれしゅうございますわ。でも、こんなぼろ服を着て行って、いいんでしょうか?』
お婆さんは、さっそくシンデレラの身体に、ちょっと杖をあてました。すると、まあ、どうでしょう! たちまちそのぼろ服は、金糸銀糸の縫いとりのある、まばゆいばかりの晴着に変ってしまいました。
それだけではありません、お婆さんは世にも美しいガラスの靴を、シンデレラにはかせました。
『まあ! まあ! まあ!』
シンデレラは、まるで夢でも見ているような気持でした。
そして、自分が
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