軽蔑された伯爵夫人よりもこの方が数等しをらしいかも知れない。
小説の中では、別れた女は酒屋へ嫁いで酒を売つてゐることになつてゐる。進士になつた男が通りかゝつてそれを見る。轎を駐め、傘をさしかけさせ、公服を着て堂々とその店に入る。女はそれと知つて顔を固くしたものの、「あなたはあなたでお役人、わたしはわたしでお酒売り」と、とり澄ましていつたきりだつた、となつてゐる。まことに見上げた態度なのだが、その先を読むと衆人に罵倒されて耐へられず、遂にはやはり自ら縊ることになつてゐる。世間といふやつはどうも、どこの国でも、女に対してはお節介すぎるらしい。いやアメリカだけは別かな?
底本:「日本の名随筆 別巻36 恋文」作品社
1994(平成6)年2月25日第1刷発行
1999(平成11)年7月10日第2刷発行
底本の親本:「高田保著作集 第四巻」創元社
1952(昭和27)年11月
入力:雪華
校正:土屋隆
2004年3月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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