。三人はそれとは気がつかないでにこ/\よろこんで水を浴びてゐました。うと/\寝てゐた猟人は、三人の天の女が、泉のすゐれんの花をゆるがせて、水の中を歩いてゐる夢を見て、ふと目をさましました。ひぢをたてゝ泉の面を見ますと、まつ青《さを》にさしてゐる月の光の中で、三人の美しい女が、たのしさうに水を浴びてゐます。
猟人はこつそりと、泉の岸をつたはつて、三人の着ものがぬいであるところへいきました。そして、その中の一ばんきれいな着ものを手に取つて見ました。それは、金と銀との糸でおつて、いろさま/″\の宝石を使つて縫ひかざりをした、立派な着もので、左の胸のところには、心臓の形をした大きな赤い紅宝石《ルービー》が光つてゐました。
猟人は、その着物をかゝへて、もとのところへかへつて、かくれてゐました。
三人の星の女はそんなことは夢にもしらないで、永い間水をあびて楽しんでゐました。そのうちに、だん/\と夜あけぢかくなりました。すると、蜘蛛の王さまが空の上から、
「もうおかへりなさい。お日さまがお出ましになると、お日さまのお馬が糸を足で踏み切ります。早く空へお上《あが》りなさい。」と言ひました。
星の女はそれを聞くと、いそいで岸へ上《あが》りました。二人の姉はすぐに着物を着て、目に見えぬ蜘蛛の糸の梯子《はしご》を上《のぼ》つて、大空へかへつていきました。
三人の中で一ばん美しい下の妹は、一しよにぬいでおいた着物がないのでびつくりしました。それがなければ空へかへることが出来ないので、一しようけんめいにあたりをさがしましたが、見つかりません。
そのうちに、お日さまがお出ましになりました。お日さまのお馬は、蜘蛛の糸を足でふみ切つてしまひました。
星の女はとはうにくれて、草の上にうつぶして泣いてゐました。さうすると森の鳥がおきて来て、
「あなたのうつくしいおめしものは、わかい猟人が取つていきました。その猟人は、あすこの木の下で、寝たふりをしてゐます。」
かう、さへづつて星の女にをしへました。星の女はそれを聞くと、すゐれんの花をつなぎ合せて花の着物をこしらへて、それでからだをつゝんで、猟人のところへいきました。そして、
「どうか私《わたし》の金と銀の着物をかへして下さい。そのかはりには、あなたのおのぞみになることは何でもしてあげます。」と、泣き/\たのみました。猟人は、
「私《わた
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