かみ合いかき合いしているので、ウイリイたちはそこをとおることができませんでした。
ウイリイはそれを見て車から百樽の肉を下《おろ》して投げてやりました。みんなは喜んですぐにけんかをやめてとおしてくれました。
それからまたどんどんいきますと、今度はおおぜいの大男が、これも食べものに飢《かつ》えて、たった一とかたまりのパンを奪い合って、恐ろしい大げんかをしていました。ウイリイは気をきかせて、すぐに百樽のパンをやりました。大男たちは大そうよろこんで、ぺこぺこおじぎをしました。
「私たちはちょうど百年の間けんかをしていたのです。おかげでやっと食べものが口にはいります。このお礼にはどんなことでもいたしますから、御用がおありでしたら仰《おっしゃ》って下さい。」と言いました。
ウイリイはそこから水夫たちをみんな船へ帰して、今度は犬と二人きりで進んで、いきました。
そうすると、ずっと向うの方に、きれいなお城がきらきらと日に光っていました。犬は、
「このへんでしばらく待っていらっしゃい。あのお城のぐるりには毒蛇《どくじゃ》と竜《りゅう》が一ぱいいて、そばへ来るものをみんな殺してしまいます。しかし、その毒蛇も竜も、日中《にっちゅう》一ばん暑いときに三時間だけ寝ますから、そのときをねらって、こっそりとおりぬければ大丈夫です。」と言いました。ウイリイはそのとおりにして、犬と一しょに、無事に城の中へはいりました。
城の門も、中の方々の戸も、すっかり明け放してありました。
四
ウイリイは犬を外に待たせておいて、大きな部屋をいくつも通りぬけて、一ばん奥の部屋にはいりますと、そこに、金色をした鳥が一ぴき、すやすやと眠っていました。その鳥の羽根は、ウイリイが先《せん》にひろった羽根と同《おんな》じ羽根でした。ウイリイは、犬から教《おそ》わっていたので、そっとその鳥のそばへ行って、しっぽについている、一ばん長い羽根を引きぬきました。
鳥はびっくりして目をあけたと思うと、ふいに一人の美しい王女になりました。それが羽根の画の王女でした。
「あなたは私の熊と狼のそばをよくとおりぬけて来ましたね。」と王女が言いました。
「肉をどっさりやりましたら、とおしてくれました。」とウイリイは答えました。
「それでは私の大男のいるところはどうしてとおりぬけたのです。」と王女は聞きました。
「
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