「マカールよ、もう神さまも許して下さるよ。神さまのまへへ出れば、わしだつて、おまいより何十倍罪がひどいかもわからない。」
イワンはかう言ふと同時に、これまでながい間おもたかつた心が、急にはれ/″\して来たやうな気がしました。
その晩からイワンは、もう故郷へかへりたいといら/\する心もちもとれてしまひました。もう牢屋から出たいとも思ひません。たゞどうかして早く死にたいと思ふだけでした。
イワンは、マカールに、自首なぞをするにおよばないとかたくとめておいたのですが、マカールは聞かないで、とう/\自白してしまひました。しかし、ロシアの裁判所から、イワンを放免するといふ指令が来たときには、イワンはもう死んで、この世の中にはゐませんでした。
底本:「日本児童文学大系 第一〇巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「鈴木三重吉童話全集 第六巻」文泉堂書店
1975(昭和50)年9月
初出:「赤い鳥」赤い鳥社
1924(大正13)年11月
入力:tatsuki
校正:伊藤時也
2006年7月19日作成
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