かりが、白々として居て、どの區畫にも/\、家は建つて居ない。去年の草の立ち枯れたのと、今年生えて稍莖を立て初めたのとがまじりあつて、屋敷地から喰み出し、道の上までも延びて居る。
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こんな家が――。
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驚いたことは、そんな草原の中に、唯一つ大きな構への家が、建ちかゝつて居る。遲い朝を、もう餘程、今日の爲事に這入つたらしい木の道[#「木の道」に傍点]の者たちが、骨組みばかりの家の中で、立ちはたらいて居るのが見える。家の建たぬ前に、既に屋敷※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]りの地形《ヂギヤウ》が出來て、見た目にもさつぱりと、垣をとり※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]して居る。
土を積んで、石に代へた垣、此頃言ひ出した築土垣《ツキヒヂガキ》といふのは、此だな、と思つて、ぢつと目をつけて居た。見る/\、さうした新しい好尚《コノミ》のおもしろさが、家持の心を奪うてしまつた。
築土垣《ツキヒヂガキ》の處々に、きりあけた口があつて、其に、門が出來て居た。さうして、其處から、頻りに人が繋つては出て來て、石を曳く。木を搬《モ》つ。土を搬び入れる
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