、と言ふ命のお降しを、度々都へ請うておこして居た。此忙しい時に、偶然流人太宰府員外帥として、難波に居た横佩家の豐成は、思ひがけぬ日々を送らねばならなかつた。
都の姫の事は、子古の口から聽いて知つたし、又、京・難波の間を往來する頻繁な公私の使ひに、文をことづてる事は易かつたけれども、どう處置してよいか、途方に昏れた。ちよつと見は何でもない事の樣で、實は重大な、家の大事である。其だけに、常の優柔不斷な心癖は、益々つのるばかりであつた。
寺々の知音に寄せて、當麻寺へ、よい樣に命じてくれる樣に、と書いてもやつた。又處置方について伺うた横佩墻内の家の長老《トネ》・刀自たちへは、ひたすら汝等の主の女郎を護つて居れ、と言ふやうな、抽象風なことを、答へて來たりした。
次の消息には、何かと具體した仰せつけがあるだらう、と待つて居る間に、日が立ち、月が過ぎて行くばかりである。其間にも、姫の失はれたと見える魂が、お身に戻るか、其だけの望みで、人々は、山村に止つて居た。物思ひに、屈託ばかりもして居ぬ若人たちは、もう池のほとりにおり立つて、伸びた蓮の莖を切り集め出した。其を見て居た寺の婢女《メヤツコ》が、其はま
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