って、一同が一様に神の子となり、こうしてついにキリストの王国が実現されるだろう』これがアリョーシャの胸に浮かぶ空想であった。
 これまで全然知らなかった二人の兄の帰省は、アリョーシャに非常に強い印象を与えたらしい。長兄ドミトリイ・フョードロヴィッチとは、同腹のイワン・フョードロヴィッチとよりずっと早くかつ親しく知り合うことができた。そのくせ、長兄のほうが遅れて帰って来たのである。彼は兄イワンの人となりを知ることに非常な興味をいだいたが、その帰省以来ふた月のあいだに、二人はかなりたびたび顔を合わせたにもかかわらず、いまだにどうしても親密になれなかった。アリョーシャ自身も無口なほうで、何ものか待ち設けているような、何ものか恥じらっているような風であったし、兄イワンも初めのうちこそ、アリョーシャの気がつくほど長い、物珍しそうな視線をじっと弟に注いだものだが、やがて間もなく、彼のことなど考えてみようともしなくなったようだ。アリョーシャもこれに気がついて幾らかきまりが悪かった。彼は兄の冷淡な態度を二人の年齢、ことに教育の相違に帰したが、また別様にとれないでもなかった。それは、イワンのこうした好奇
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