重な時間を浪費したのは、第一には儀礼のためであり、第二には、『何はともあれ、あらかじめ何か先手を打っておこう』という、ずるい考えによるのであると。
もっとも、自分は、この小説が、『本質的には完全な一体でありながら』おのずからにして二つの物語に分かれたことを喜んでさえもいるのである。読者が最初の物語を通読された以上、第二の物語に取りかかる価値があるかないかは、すでにおのずから決定されるであろう。いうまでもなく、誰ひとり、なんらの拘束を受けているわけではないので、最初の物語の二ページくらいのところから、もう二度とあけてみないつもりで、この本を放り出しても、いっこうにさしつかえはないのである。しかし、公平な判断を誤るまいとして、ぜひとも最後まで読んでしまおうというようなデリケートな読者もあるのではないか。たとえば、ロシアのあらゆる批評家諸君がそれである。かような人たちに対しては、なんといっても気が楽である。つまり、彼らがどんなに精密で良心的であろうとも、やはりこの小説の第一の插話の辺で本を投げ出すのに最も正当な口実を提供しておくわけである。さあ、これで序文は種切れだ。自分はこれがよけいなも
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