ワン・フョードロヴィッチは薄笑いをした。
「なぜかといえば、あなたはどうやら自分の霊魂の不滅も、そればかりか自分で教会や教会問題について書かれたことも、信じておられぬらしいからじゃ」
「あるいは仰せのとおりかもしれません!……しかしそれでも、僕はまるきりふざけたわけではないのです……」と、イワン・フョードロヴィッチは不意に奇妙な調子で白状したが、その顔はさっと赤くなった。
「まるきりふざけたのではない、それは本当じゃ。この思想はまだあなたの心の内で決しられていないで、あなたの心を悩ましておるのじゃ。しかし、悩める者は、時には絶望のあまり、おのれの絶望を慰みとすることがある。あなたも今のところ、絶望のあまりに雑誌へ論文を載せたり、社交界で議論をしたりして慰んでおられる。しかも自分で自分の議論が信ぜられず、胸の痛みを感じながら、心の中でその議論を冷笑しておられるのじゃ……。実際あなたの心の中でこの問題は決しておらぬ。ここにあなたの大きな悲しみがある。なぜといえば、それが執拗に解決を強要するからじゃ……」
「これが僕の心中で解決されることがありましょうか? 肯定的に解決されることが?」依然と
前へ 次へ
全844ページ中193ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中山 省三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング