n四十四年三月
あそびめ
たはれをのかずのまにまに
じだらくにみをもちくづし、
おしろいのあをきひたひに
ねそべりてひるもさけのみ、
さめざめとときになみだし、
ゆふかけてさやぎいづとも、
かなしみはいよよおろかに、ながねがひいよよつめたし。
あはれよのしろきねどこの
まくらべのベコニヤのはな。
[#地から3字上げ]四十五年五月
南京さん
李《リイ》さん、鄭さん、支那服さん、
あなたの眼鏡はなぜ光る、
涙がにじんで日に光る。
鳥屋の硝子も日に光る。
目白、カナリヤ、四十雀、
鶉に文鳥に黒鶫《くろつぐみ》、
鳥もいろいろあるなかに
おかめ鸚哥《いんこ》はおどけもの
焦《ぢ》れて頓狂に啼きさけぶ。
さてもいとしや、しをらしや、
けふも入日があかあかと
わかい南京《ナンキン》さんは涙顔。
[#地から3字上げ]四十四年十月
蝮捕り
旅のすがたの蝮《まむし》捕り。
紺の脚絆に紺の足袋、
紺の小手あて、盲縞《めくらじま》。
羽織、腹掛しやんとして草鞋つつかけ忍びあし。
わかい男の忍びあし、
まがひパナマに日が射せば、
苦《にが》みばしつた横顔のことにつやつや蒼白く、
ほそ
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