おばあさんに一人のちっちゃなまご息子《むすこ》がありました。おばあさんはそのまご息子がかわゆくてならなかったものですから、その子をよろこばせるためにその子のよろこぶような、そうしてその子の罪のない美しいお夢をまだまだかわいいきれいな深みのあるものにしてやりたいのでした。それでいろいろなおもしろいお唄をしぜんと自分でつくりだすようになりました。やっぱりその子がかわいかったのですね。
 それも初めはただなんということなしに節をつけておはなししたり、うたったりしたものでしょうが、そうしたものはどうしても忘れやすいものですから、また覚え書きに書きとめておくようになりました。そうなるとまた、そうして書きとめておいたのが一つふえ二つふえしていつかしら一冊の御本にまとまるようになったのでしょう。
 そのおばあさんの養子にトオマス・フリイトという人がありました。この人は印刷屋さんでした。で、そのお母さんが自分の息子のためにうたってくだすった、そうしたありがたいお唄を刷《す》って、自分の息子ばかりでなく、ほかのたくさんの子供たちをよろこばしてやりたいと思ったのでした。それでこのマザア・グウスの童謡の御本
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