見込が無いから、というので、これも旋頭歌だからどちらから読んでもいい。強く愛している女を独占しようとする気持の歌で、今読んでも相当におもしろいものである。「うつくし」は愛することで、「妻子《めこ》みればめぐしうつくし」(巻五・八〇〇)の例がある。「死ねやも」は、「雷神《なるかみ》の少し動《とよ》みてさしくもり雨も降れやも」(巻十一・二五一三)と同じである。併しこの訓には異説もある。この愛するあまり、「死んでしまえ」と思う感情の歌は後世のものにもあれば、俗謡にもいろいろな言い方になってひろがって居る。
○
[#ここから5字下げ]
朝戸出《あさとで》の君《きみ》が足結《あゆひ》を潤《ぬ》らす露原《つゆはら》早《はや》く起《お》き出《い》でつつ吾《われ》も裳裾《もすそ》潤《ぬ》らさな 〔巻十一・二三五七〕 柿本人麿歌集
[#ここで字下げ終わり]
同前。朝早くお帰りになるあなたの足結《あゆい》を潤《ぬ》らす露原よ。私も早く起きてその露原で御一しょに裳《も》の裾《すそ》を潤《ぬ》らしましょう、というのである。別《わかれ》を惜しむ気持でもあり、愛着する気持でもあって、女
前へ
次へ
全531ページ中363ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
斎藤 茂吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング