に咲きて散る見ゆ」(巻五・八四一)という具合に、「て」の入っているのが多い。
○
[#ここから5字下げ]
真葛原《まくずはら》なびく秋風《あきかぜ》吹くごとに阿太《あた》の大野《おほぬ》の萩《はぎ》が花《はな》散《ち》る 〔巻十・二〇九六〕 作者不詳
[#ここで字下げ終わり]
「阿太の野」は、今の吉野、下市町の西に大阿太村がある。その附近一帯の原野であっただろう。葛《くず》の生繁《おいしげ》っているのを靡《なび》かす秋風が吹く度毎に、阿太の野の萩が散るというのだが、二つとも初秋のものだし、一方は広葉の翻《ひるが》えるもの、一方はこまかい紅い花というので、作者の頭には両方とも感じが乗っていたものである。それを、「吹く毎に」で融合させているので、穉拙《ちせつ》なところに、却って古調の面目があらわれて居る。特に、「阿太の大野の萩が花散る」の、諧調音はいうに云われぬものである。
○
[#ここから5字下げ]
秋風《あきかぜ》に大和《やまと》へ越《こ》ゆる雁《かり》がねはいや遠《とほ》ざかる雲《くも》がくりつつ 〔巻十・二一二八〕 作者不詳
[#
前へ
次へ
全531ページ中346ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
斎藤 茂吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング