い方は万葉にも少く、普通は、鳴きとよむ、榜《こ》ぎとよむ、鳥が音とよむ等、或は「山吹の瀬の響《とよ》むなべ」(巻九・一七〇〇)、「藤江の浦に船ぞ動《とよ》める」(巻六・九三九)ぐらいの用例である。それも響、動をトヨムと訓むことにしての例である。そうして見れば、「入江響むなり」の用例は簡潔で巧《たくみ》なものだと云わねばならない。この句は旧訓ヒビクナリであったのを、代匠記で先ず注意訓をして「響ハトヨムトモ読ベシ」と云い、略解《りゃくげ》から以降こう訓むようになったのである。調べが大きく、そして何処かに鋭い響を持っているところは、或は人麿的だと謂《い》うことが出来るであろう。ついでに云うと、この歌の、「田居に」の「に」は方嚮《ほうこう》をも含んでいる用例で、「小野《をぬ》ゆ秋津に立ちわたる雲」(巻七・一三六八)、「京方《みやこべ》に立つ日近づく」(巻十七・三九九九)、「山の辺にい行く猟師《さつを》は」(巻十・二一四七)等の「に」と同じである。

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さ夜中《よなか》と夜《よ》は深《ふ》けぬらし雁《かり》が音《ね》の聞《きこ》ゆる空《そら》に月
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