である。なお、技術上から分析すると、上の句で、「の」音を続けて、連続的・流動的に云いくだして来て、下の句で「ユツキガタケニ」と屈折せしめ、結句を四三調で止めて居る。ことに「ワタル」という音で止めて居るが、そういうところにいろいろ留意しつつ味うと、作歌|稽古《けいこ》上にも有益を覚えるのである。次に、此歌は河の瀬の鳴る音と、山に雲の動いている現象とを詠んだものだが、或は風もあり雨も降っていたかも知れぬ。併し其風雨の事は字面には無いから、これは奥に隠して置いて味う方が好いようである。そういう事をいろいろ詮議《せんぎ》すると却って一首の気勢を損ずることがあるし、この歌の季《き》についても亦同様であって、夏なら夏と極《き》めてしまわぬ方が好いようである。この歌も人麿歌集出だが恐らく人麿自身の作であろう。巻九(一七〇〇)に、「秋風に山吹の瀬の響《とよ》むなべ天雲《あまぐも》翔《がけ》る雁に逢へるかも」とあって、やはり人麿歌集にある歌だから、これも人麿自身の作で、上の句の同一手法もそのためだと解釈することが出来る。
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大海《おほうみ》に島《しま》
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