のに心を躍らした。
 今度思ひがけなく沖繩一見の旅に出るまでは、耻かしながら沖繩本島は淡路島か小豆島位の大さしかないものと思つて居たのであるが、成る程船の左舷の端から端へ連る此の海上に漂ふ長い朽繩の樣な「屋其惹《ウチナー》」の島は、長さ四十里にも近いと云ふのは本當だと思はれた。私共は何時も、九州の片端に小さく入れられてゐる此の島の地圖を見せられてゐるので、つい斯う云ふ間違つた考へを起してゐたのである。これと同じ樣なことは、曾て布哇の島へ行つて其の大きなのに驚き、米國に渡つて再び其の廣いのに魂消たのも、畢竟何れも日本や歐洲と同じ一ペーヂの地圖に收められてゐるのに見馴らされてゐた爲めに外ならない。
 今一つは沖繩は珊瑚礁だと教へられてゐたので、水面からやつと浮き上つてゐる位の島かと思つたら、島の北の方には可成高い山が列なつて居り、中程から南は大分平であるが、そこさへ丘陵が高く低く參差してゐることであつた。朝の食事を濟まして急いで荷物を片付け甲板に出て、次第に近づいて來る沖繩の海岸、那覇の港を見入つてゐると、意地惡く時雨がパラ/\と降つて來る。

          二 那覇へ着く

 嘉永
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