う云った後に。
 十三近くまで、私達は抱擁しあっておりました。しかし、二十二日とちがって、彼はとても冷淡で、邪慳でした。私はこのまま帰るのはどうしても嫌だと申しました。そして、又、車を降りてから歩き出したのです。一言云えば、何かつっかかられるので、私は黙っていました。何かのはずみで、私がどんな時でもあなたのことを考えていると云ったら、嘘をつけ、と高飛車に云われました。実際、私は一人で居る時も、大勢いる時も、彼のことを考えつづけてましたもの、それは本当なんです。彼は又、私の小説のことにこだわって、本当のことがどうして書けないのだ、など云います。踏切番のいない踏切をよこぎる時、私、このまま轢かれてしまいたいと思った位です。彼は、わけのわからぬことを云いつづけました。十三の駅近くへ戻り、私はやっぱりこんな状態で別れたくはないと云いました。そして、とあるのみ屋へ又はいったのです。小母様。そこで又、ある事件が起ったのです。
 一人の若い男が非常にのんで居りました。スタンド式にたっているところです。さて、私と彼は、相変らずいがみあった感情のまま椅子にこしかけました。と、その男が、何かかんか云ってく
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