床の中で夢を思い出していました。レコードの針を一ぱい打ちつけたもの――そのものが何だったか忘れたけれど、それに布をかぶせておいて、暫くしてから布をとりはずし、唇を寄せて、すうっと空気をすうのです。そうすれば子供が生れる。そんなことを、S新聞社のN女史が一所懸命に私に教えてくれている夢でした。
 おかしな夢だ、など苦笑しながら、うつらうつらしてました。と、電話の鈴。私は、鉄路のほとりだろうと思いました。ところが、それは九時すぎ、会社へ行った兄からだったのです。
 ここまで書いて玄関に呼声。出てゆきました。若しや、鉄路のほとりからの速達ではないかと。ちがいました。彼からは何にも。
 今、正午のサイレンが鳴りました。昨夜っから、十時間ちかく書いているのじゃないかしら。
 さて、いよいよ、公園でのことに戻ります。小母さん。辛抱してよんで下さいとは申しません。つまらなくなれば、とばしよみでも結構、途中でやめちまって下さってもいいの。唯、私があなたあてに書こうと思ったものですから。
 さて、公園へ作曲家のぼうやを連れてゆくのに同行したのが、青白き大佐です。私は、彼に会うことをひどくいやがる気持でも
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