した。
 私は神戸へもどりました。着物を着替えに家へ帰り、さて、今夜徹夜の舞台稽古へ、十一時前に行くことにしたのです。行くほんの少し前、青白き大佐より電話がかかり、喫茶店で少し喋ってから一しょに会場へゆきました。青白き大佐には、何でも云うから、今日の出来事もつげました。だけど、彼さえも、私の自虐的な、みじめな、けがらわしい行為を、すっかりはわからなかったでしょう。彼は、よく私を理解しているようでしたけど、やっぱり、心の底までわかりはしなかったと思います。会場へ行った私は、演出する人から、鉄路のほとりが神戸へ来ていることを知りました。一刻も早く会いたい。そして一刻も早く、私のみにくさを告げて、ゆるされたい、そう思ったのです。鉄路のほとりはのみに出かけたらしく、又帰って来るということを知りました。その間、仕事のことで多忙。だけど私の心は、仕事のことなど考える隙さえなかったのです。楽屋へはいり、気持のいらだちを、お薬をのんでごまかそうとし、太鼓の具合をしらべ――これは青白き大佐がたたくことになってたのです――さて、又、もう帰って来るだろうと舞台の方へあがったのです。いました。彼は、仕事を、装
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